このコンテンツでは、保険を扱う職業柄、幅広い業界や経営者とのつながりのある吉田が、その主観的視点から経営に役立つ情報や経済を解説します。
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経営はうまくいっているものの、世代交代がうまく進んでいない企業は少なくありません。
「今は良くても、10年後が想像できない」と次世代は悩んでいます。
そこで今回は高齢化した経営者からスムーズに経営権を譲り受け、どう世代交代していくかについて考えました。
会長の発言力が強く、会議がまとまらない
とある企業の幹部から、「70代会長の発言力が強く、ことあるごとに話が進まない」という相談を受けました。
この会社の会長はもともと外部から招かれた優秀な人材で、赤字経営をわずか数年で黒字に立て直し、事業を拡大してきた手腕の持ち主。
会長となった今も発言力は大きく、様々な事柄について最終決定を下しています。
ただ最近はIT化やDX化など、会長が現役で会社を率いてきた時代にはなかった変化が起こり、幹部には焦りがあるとのこと。
早く新しい仕組みを導入し、今後に備えていきたい幹部に対し、会長は新しいサービスにかかるコストや、これまで自分が蓄積してきた知識が適用できないジャンルに対して不安がぬぐえない様子だと言います。
現場の多忙を理解し、日々の業務に追われている幹部は多少の費用がかかってもシステム構築を外部のプロに依頼したいのですが、広報や求人など、自分の手を動かして課題を解決してきた会長には、その価値が伝わらないそう。
何か一つ決めるにも会議が長引き、幹部は疲弊しています。
私はこの話を聞いて、どうすれば若手幹部に経営権をスムーズに移行していけるかを考えました。
利益を出す期間に対して、業務整理をする期間に対する意識が長すぎる
高齢ではあるけれど優秀な経営者が退かず、世代交代ができていない会社は珍しくありません。
私がこれまでお会いしてきた高齢の経営者の多くも、次を担う社長に比べて意思決定力やコミュニケーション能力がはるかに高いということがよくありました。
ビジネスパーソンとしても会長に分があり、幹部であれ取引先であれ、会長の発言を無視できるような状況ではありません。
ただどれだけお元気な会長も、この先どれくらいの期間先頭に立てるかと考えると、長くても10年。
会長の健康を信じて世代交代を先延ばしにしている会社もありますが、その多くが会長の突然の入院など否が応でも世代交代せざるを得ない状況になったときは、黒字だったはずの経営が危ないところまできているというケースが多くみられます。
利益を出すことについては1~3ヶ月単位で考えている会長も、自分の業務を引き継ぐことについては5~10年といったスパンで考えていることがほとんど。
健康な方ほど5、60代くらいの頃の感覚でいるため、利益創出の優先順位が高く、世代交代に対する危機意識が低いのです。
本来であれば社長を筆頭とする幹部が経営を安定させ、会長が安心したタイミングで実権を譲ってもらうのが理想ですが、会長がしっかりしている会社ほどそれが難しいのが現実。
この会社もそれは望めないでしょう。
ライバル会社の状況を調査し、自社の遅れを説得材料に
今回はアドバイスに留まりましたが、もし私がこの会社をコンサルティングするとしたら、幹部にはまず、ライバル会社を調査することを勧めます。
岡山の企業であれば、中四国や西日本にあるライバル企業の経営体質を観察してみるのです。
例えば自社のマーケットが縮小していくことを説明するには、ライバル会社には売上に対して何人くらいの従業員がいるのか、権限委譲の必要性を説得するには何歳の経営者が手腕を振るっているのかといったことを示し、それらの会社に勝つには自社に何が必要かを説明します。
成功している同業者が複数あるなら、どの会社のやり方が自社に合っているのか、自社の人材に合った戦略はどういったものかを練る必要があるでしょう。
必要なのは年齢を盾に無理やり世代交代を迫るのでも、あきらめて会長が倒れるのを待つのでもなく、確かな根拠とそれに基づく今後の戦略を示し、納得してもらったうえで世代交代を行うこと。
実力者の会長が不安を抱えたまま権利だけをもらっても、これからの経営がうまくいくとは思えません。
会議がスムーズに正しい方向に進むのは、そういった準備が整ってからになると考えておいた方がよさそうです。
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