このコンテンツでは、保険を扱う職業柄、幅広い業界や経営者とのつながりのある吉田が、その主観的視点から経営に役立つ情報や経済を解説します。
今回は「800年に1度の東西文明の転換期に、経営者が知っておくべきこと」についてお話しします。
これからの経営方針に迷っている経営者の皆さん、ぜひご一読ください!
今、東洋と西洋の文明が入れ替わろうとしている
今回私がお話しする内容は、1999年に第二海援隊から出版された「文明と経済の衝突」(著:村山 節 、浅井 隆)をもとに、経済界のトップを走る方々とのお話から得た知見です。
この本には、800年周期で起こってきた西洋と東洋の文明の転換期が、今まさに到来していることが書かれています。
大まかに説明すると、この著書に記されている西洋の文明というのは、男性的・父性的・権力的・論理的であることに価値を置く社会。
一方で東洋の文明とは、女性的・母性的・言語的・感性的なことに価値を置く社会です。
強さ、スピード、効率性など、私たちが社会の一員として求められてきたもの、また社会に求めてきたものも「西洋的」な価値だということがわかります。
経済発展を重視してきた西洋的なこの800年間は、野生動物など人類にとっての危険が減り世の中が便利になる一方で、人は自ら作り上げた競争社会に疲弊しました。
経済発展の代償として損なわれた環境は、もはや人が住めなくなるほどの状態に。
世の中は待ったなしで自然を保護し、共存と理解を重視する東洋的な価値観を求めているのです。
東洋の文明ではどの国が中心となるのか
西洋的な文明は、産業革命を発端にヨーロッパからアメリカへと広がっていきました。
ただヨーロッパ諸国の経済は長く停滞し、経済大国の象徴だったアメリカは現在、大統領選挙さえスムーズに決着がつかないほど混乱しています。
もはや西洋的な文明に求心力があるとは言えません。
では今後、東洋的な文明はどの国がリーダーとなっていくのか。
私は個人的に、税金などが優遇されるシンガポールなどの「オフショア」がまずリーダーシップをとっていくのではないかと考えています。
西洋から東洋への転換は、100~200年かけてゆっくりと進んでいくとされています。
経済を重視してきたこれまでの文明が、あっさり消えてしまうわけではありません。
まずは税金の負担なくゆったりと経済を回せる、オフショアに注目が集まっていくというのが私の予測です。
ただこれから始まる東洋の時代は、「ゆったりとした経済」が価値観の中心になるわけではありません。
どうしようもない状態にまで破壊してしまった自然環境の保護と回復、そして新しい文化の発芽がどこかで起こってくるはずです。
G7やG20、伊勢志摩サミットでの国際的な立ち位置を見る限り、自然保護では日本がリーディングカンパニーになる可能性も十分にあるのではないかと私は見ています。
これからは何に価値が求められていくのか
西洋から東洋的な文明に変化していることの証明のひとつとして、ガソリン車が減っていくこと、原子力から自然エネルギーへの転換が行われていることが上げられます。
一方でめまぐるしく変わる時代に適応していくことは、非常に男性的なのではないか?という意見もあるでしょう。
新しい時代が求めるアイデアや商品を開発していくことは、働き方をいっそう加速させるようにも感じられます。
ただこれもエネルギーのシフトに合わせ、スピードや効率化をロボットに譲りながら、「人間だからこそできること、楽しめることは何か」に価値観は少しずつ変わっていきます。
キャンプや釣りがブームになってきていることからもわかるように、よりストレスフリーな、自然のなかでゆったりと流れる時間などに価値は見出されていくはずです。
エネルギー効率が下がって生産量が抑えられることと同時に、ゴミの削減も進むでしょう。
たくさん稼いでたくさん買う時代は終わります。
「人間らしい」仕事によって得た収入で、気に入ったものを修理しながら長く使い、ゴミの少ない社会を循環させていくようになるのです。
いらないものを買う習慣がなくなれば、今ほど給料は必要なくなるかもしれません。
「給料をたくさんもらえることが幸せ」だった西洋的な考えは、180度変わっていきます。
東洋的な文明の時代に、経営者の姿勢はどうあるべきか
ではこういった変化の到来を踏まえて、経営者はこれからの経営方針をどう立てるべきなのでしょうか。
まずお伝えしておきたいのは、この西洋から東洋への転換は100年以上の時間をかけて、ゆっくり進んでいくと考えられていること。
エネルギーの転換や人々の自然回帰など「それらしき」兆候は見られるものの、今すぐ経営方針を転換しなければならない、といった緊急性のある課題ではありません。
大切なのは今後、その流れに沿って求められることが変わると理解しておくことです。
ゴミを捨てることに費用がかかる動きがすでにあるなか、設備にせよ材料にせよ、ものを増やせば将来的には処分に追われることが予測できます。
ものを長く使うことが前提になるのであれば、長期使用・修理可能を見越した商品を作らなければ、売れなくなることは明らかなのです。
また弊社のお客さまにも製造と農業などの2軸で事業を展開している企業がありますが、まだまだ西洋的な価値観の強い今、不採算事業に対する判断は慎重であるべきです。
東洋の時代にマッチするのであれば、不採算事業であっても未来への投資と考えて残しておくという選択肢が出てくるからです。
経営者の皆さんには何かとプレッシャーがかかる時代、必要なのは「時代やニーズに合わせて変化していこう」という姿勢です。
今ある視野をもう少し先にのばして、自社の未来について考えてみることをおすすめします。